「教材とコンピュータ整備の手引き」(教育新聞社)
昭和60年度に「国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律」により、教材費国庫負担制度が廃止された。
これは我が国の経済の低迷に伴う国の財政のひっ迫に端を発している。すなわち、経済不況の中で国は昭和50年度以来多額の特例国債(いわゆる赤字国債)が発行され、歳入における国債への依存度が高まり、国債発行残高が累積する等、極めて厳しいものとなり、教材の整備についても第2次教材整備10カ年計画にもかかわらず、昭和57年度以降は、教材に係る国庫負担金の額が減額される事態になった。
こうした中で、政府は第2次臨時行政調査会や臨時行政改革推進審議会を設置し、行政改革に取り組み、この結果、既存の制度・施策、特に補助金等の見直しを行うなど徹底した節減合理化が行われ、義務教育費国庫負担金についても、見直しがなされ、教材費並びに旅費がこの対象となった。
教材費の国庫負担については、昭和28年度から義務教育費国庫負担制度が再び設けられる際、当時、地方財政の状況が悪く教材の整備を含め、学校の維持運営費について寄付金という形式での父母の税外負担に負うところが、相当高かったこともあって、国庫負担の対象とされたものである。しかし、その後、「教材基準」の設定やそれに伴う国庫負担金の増額が図られている中、各市町村において所要の教材費を確保する実態が定着してきていることもあって、国庫負担制度を廃止し、地方の一般財源で措置することとされた。
なお、国庫負担制度の廃止に伴い、各地方公共団体が必要な教材費の確保が出きるように、また財政運営に支障が生じないように、昭和60年度以降は地方交付税制度により全面的に財源措置がされるようになった。
なお、この教材費の一般財源化により「教材基準」は、国庫負担制度の下での教材の整備目標を示す機能及び国庫負担の対象範囲を示す機能を失うこととなった。しかし、学習指導要領にのっとった教育を実施する上において、標準的に必要とする教材品目並びにその数量を示すという観点から、国庫負担制度が廃止された後も「教材基準」は市町村や学校が教材を整備する際の目標として活用された。